耳なし芳一、というのをご存知だろうか。
盲目の僧・芳一が、夜な夜な平家一門の幽霊たちに、「平家物語」を琵琶で弾き語っているのを見た住職が、こりゃいかん、と、芳一の全身に経を書き、幽霊達から芳一を見えないように、かくまってやる。
ところが、唯一、耳に書くことを失念していたため、幽霊達からは芳一の耳だけが見えてしまっていた。
幽霊はその耳をちぎって持っていってしまった。という話。
子供の頃、怪談で聞いた有名なこの話。
そして思ったわけである。
いくらそこに耳があったからって・・・持って行くか??
どうすんだ、耳なんてお持ち帰りして。
大体宙に耳だけ浮いてるってありえないだろキモイだろ、それを持って帰ってどうする気だ幽霊。
幼い私は非常に腑におちなかった。
しかし、大人になったいま、ふと思うわけである。
ってことは。
耳以外には、くまなく全部、経を書きつけたんだね。
あそこにも。
そのことに気付いた瞬間、ああ、自分もついに腐りきった大人になっっちまったなぁ、と遠い目をしてしまった。
耳を持って帰るかふつー!変なの!などと思っていたあの頃の私が眩しい。
なんてピュアッ娘だったんだ、遠き日の春雨・・・。
そんなことを思いながら通勤しました。
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