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今日も生き恥さらします。 明日も生き恥さらします。 真の武士 ―オタク― になるために・・・。
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高校生のとき。
バッグにつけていた缶バッジで、手首を切ってしまったことがあった。
一直線に切れた赤い筋、放っておいてもよかったのだが、ヒリヒリするので、保健室に行った。

缶バッジで切っちゃって。
すみませんけど、ガーゼかなんか、当ててもらえますか?


保健室の先生は、ニコニコしながら、それはそれは厳重に、とても丁寧に、包帯を巻いてくれた。

しょうじき、バンソウコウのひとつでも貼っておけばいい程度の傷だった。
でも先生は、おおげさなくらい、丁寧に治療してくれた。

ぐるぐるに巻かれた包帯、違和感を覚えながら保健室をあとにした。


あれから10年以上経って、先生の「危惧」がつたわった。
あのとき、先生が、思春期の女の子、しかもけっこう地味な部類の少女が、うつむきながら見せた手首の、一直線にはしった傷を見て、何を想像したのか。

何も聞かずに、何でもない様子を装って、厳重に厳重に包帯を巻いてくれた。

あのとき、包帯だけじゃなくて、ものすごい優しさも巻いてもらったんだと、10年以上経って思った。
それは見当違いの、ただの勘違いだったけれど。
先生は、それだけ、心配してくれたんだ。

その優しさを、しみじみと振り返るのにかかった時間、10年。
私の歩みは、カタツムリよりも遅いかもしれない。



北極星は、巡らない星。
いつも同じ方角に静かにひかっているので、船乗りたちの、大切な指針となった、目印の星。
北極星、またの名を北辰の星。

でも実は、厳密に言うと、北極星は、ちょっとブレたりしているらしい。

そんなことを大人になってから知ってしまったりもするけれど。
昔もらった、本当の優しさに気づくことができた分、私はあのころよりも優しい生き物になれたんだろうか。
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